驚いたのはそれからの手続きの長さ。全ての検査、治療項目に同意書を求められた。私が研修医をしていたころとは様相を異にしている。以前は同意書は一枚程度であった。その後、各地で起きた医療ミス問題等によって、医療行為の書面での確認が必須事項となったのだろう。自分は開業医のため、明日の退院を認めてほしい旨を申し出ると担当医は戒めるような口調で、「不可能とは言いませんが、それは相当大変なことになりますよ。足が痛くて下に降ろせないでしょうし、降ろしたとしても今度はぼんぼんに足が腫れてくるでしょう。事情もわかりますが、仕事は休めませんか?無理をしても良い結果になりません。通常は2週間の入院が必要です。以上説明したことを理解していただけるのであれば認めます」手術室に運び込まれたのは11時過ぎ、実際に執刀開始となったのは12時近くになっていた。過去に同様の手術を行ってきた私は手術の経過はよくわかっているが、ただ一つ違うのは麻酔法だった。私が行ったときは腰椎麻酔といって、下半身全部に麻酔を効かせたが、今回は明日退院ということもあり、局所麻酔で行うこととなった。局所麻酔では当然多少の痛みが伴うことが予想されたが、早期回復のためにはやむを得ない。手術は順調に進み、1時間程度で無事終丁した。鎮静剤のためボーッとしていたが、ミイラ取りがミイラになるというのはまさにこのようなことをいうのだろうと思った。同時に、こんな真夜中に緊急手術をしていただいた担当医、看護師さんたちに大変感謝した。18室ある慈恵医大の手術室もさすがにこの時間には誰もいなかった。治療後は足を高く上げてぐっすり眠ったが、その夜泊まることになったのは救急患者たちの臨時ベッドだった。朝はあっという問にやってきた。「本当に今日退院ができるのだろうか?」と不安に思いながら、ギプスの巻かれた足をベッドの下に降ろしたとたん、激痛が走った。「これはやばいよ。仕事どころではない。もし、行ったとしても、この痛みでは集中して治療に専念できない」と直感した。朝7時半の回診には昨日遅くまで手術をしてくれた医師が様子を見に来てくれた。「仕事を休むことに決めました。この痛みではどうにもなりません」というと、ほっとした表情で「そのほうが問違いありません。ゆっくり休んでください」といたわってくれた。